開催日:2018年4月16日 通算238回  /  参加者:10名


研究者:H・Iさん

自己病名:統合失調症・リンチ不安型

研究テーマ:「人と親しくなれない・“りべるて”で孤立している問題」について


 

<苦労の内容>

人と親しくなれない。それは、今に始まったことではない。遥か昔の学生時代からの悩みである。それが今でも続いている。“りべるて”でも孤独に陥り、周囲に不信感を抱くことが常にある。苦痛で仕方ない。しかし「これも修行」と思って、“りべるて”に通い続けている・・・物心ついてから現在まで、Iさんがずっと抱え続けてきた実に重い苦労です。(Iさんは40代の男性で、当事者研究のレギュラーメンバーです)

 

 

どんな状況になるの?

Iさんは苦労の期間が長い分だけ、自分が陥る「孤立パターン」をよく自己観察しておられ、状況を要領よく話ししてくれました。こんな内容です。①私は「嫌われる、イジメに遭う」という“おびえ”を常に持っている→②「遠回しな言い方(意味深な言い方)」をされて相手の気持ちが分からなくなる時や、「スームズに会話」が行えない時に「嫌われた」「イジメられた」と被害的になる→③一気に不安が高まる→④自分の態度が「より暗く」「冷たく」なる→⑤いよいよ「輪の中に入れない」→⑥完全に孤独に陥る→①に戻る。この悪循環の連続。 

 

 

どんな方法で自分を助けているの?

こんな状況が続くとなると、想像しただけでも、かなりハードです。いたたまれない現実の連続でしょう。「どんな方法で自分を守っているの?」という質問が出ました。I さんは「一人になれる場所に避難して、ひたすら耐えています」と答えました。(りべるてには“ひきこもり部屋”という部屋があり、そこに引きこもることが多いらしい)さらに、こう続けました「本当は、嫌われている人、イジメてくる人と仲良くなりたい」「ギャグの一つでも飛ばせる、明るい人間になりたい」「スマートな身のこなしが出来る、そつのない.....人間になりたい」そして、「そうなれない自分を責め、日々悩んでいる」のだと・・・。

 

 

「ギャグの練習でもしてみる?」・・・でもな~???

会話が上手く流れないのが苦痛なら、「自分の得意分野に話題を変える」「共通の話題を探す」「質問して聞き役に回る」、思い切って「ギャグの練習でもしてみるか」等など、いろいろな意見が出ました。しかし、普段のI さんの人柄を知っている人達は、意見を言いながら「でもな~???」という感覚を持っていたようです。 Iさんは「ギャグを飛ばし、周囲を明るくしながら、何でもそつなく....こなす、スマートな身のこなしが出来る人」を目指しているらしい。いや、「そういうキャラでないとあかん」と考えているのかもしれない。でも、「何かが違う」・・・それが皆の感覚のようでした。 それを、あるメンバーさんが、こんな風に言葉にしてくれました。「I さんは、今の自分ではダメだと思っている。明るく、スマートなキャラでないとダメだと思っている。でも私達は、ギャグの一つも口にできず、気の利いた話も出来ず、スマートな身のこなしも出来ず、そつない....人間になれない自分はダメな奴だ、と人知れず悩でいる。・・・・・・そういうI さんが良いと思うのだ」と。

 

 

<大切な「何か」>

そんな話をしているうちに、時間が来て、この日の研究は終わりました。明らかになった事も、鮮やかな話の展開も、具体的な計画や方針も、どれもありません。でも、大切な「何か」・・・。誰もが自分に引きつけて考え、熟成させなければならない大切な「何か」が語られた。そんな研究でした。 Iさん、貴重な体験発表、ありがとうございました。”人と親しくなれない問題”との付き合いは、今後、どうなっていくのでしょうか?研究は続きます。